【コラム】「なんかドラマーと合わないんです!」ドラマーとベーシストの相性〜ゲーリー・バートンの自伝から〜

以前紹介した、ゲーリー・バートンの自伝に面白い逸話が載っていました。

曰く、1971年のカーネギーホールでのコンサートのフィナーレでの、オールスタージャムセッションにて。
ドラムスがアート・ブレーキー、ベースはチャールズ・ミンガス、ピアノにジョン・ルイスという夢のようなリズム隊だったそうです。

で、何をやるかという選曲の時に、なかなか誰からも意見が出なかったので、
プロデューサーが「ならばブルースで行こう!」という、とてもありがちな結論に至ったそうです。

するとミンガスが一言、
「誰もがブルースを演奏出来るわけじゃないぞ。」
と呟いたそう。

まだ20代だった、しかも白人だったゲーリーは、自分のことを言われているんだと思い、ミンガスをみたら、ミンガスはジョン・ルイスを睨んでいたそうです!

当時は黒人の中にも、はっきりとした出生に関する優劣があったようで、ミンガスはそんなことも含め、ジョンの上品なアプローチが嫌いだったようですね。

で、話はこれだけで終わりません。
いざ演奏が始まると、ビートのトップで演奏するスタイルのアート・ブレーキーと、リラックスしたリズムでの演奏を好み、時にはビートから遅れることも厭わないというミンガスの間で、一発触発的な、つまりそのうち二人が殴り合いを始めるんじゃないかというような緊張感が!

ブレーキーはどんどんテンボを進め、一方のミンガスはそんなことに御構い無しにテンボを遅らせ、ブレーキーの方をなじるように睨んでいる!
(アマチュアのジャムセッションでたまに見る光景ですね!)

でもとりあえず殴り合いにはならず、セッションはなんとか終了したそうな。
いやー、凄い緊張感だったんでしょうね。

そういえば僕もレッスンの時に、
「なんかドラマーと合わないんです!」
なんて相談をよく受けましたが、ブレーキーとミンガスなんていう、ジャスの巨匠どうしが合わないんだから、アマチュアの君たちが合わなくて当たり前かも、ですね。

そうそう、先日見たNHKの番組で、ラグビーの現イングランド代表コーチで、元日本代表コーチだったエディー・ジョーンズが日本の高校生を特別指導していたんですが、その時に口酸っぱく言っていたのが、選手同士のコミュニケーションの重要性です。

ということで、一緒にやっているドラマーとどうも合わないと悩んでいるベーシストの君、
まずは朝までドラマー君と酒でも飲みながら、お互いのビートに関する意見をぶつけ合ってください。

で、ブレーキーとミンガスくらい意見が合わないようなら、
「仕方ないね、またいつの日か、一緒にやろうね!」
って言って、別れてください!

チャンチャン。

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納浩一 CODA コーダ

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