キャンディーズのスーちゃんこと、田中好子さんが先日亡くなられました。
最後の肉声のメッセージ、何ともいえない気分で聞いていました。
とにかくあの弱々しい声、そして「女優をもっと続けたかった」という切実な、しかしかなわぬ望み。辛く切ない想いがこみ上げてきました。
実は僕もあのころはキャンディーズがとっても好きでした。いまでもカラオケに行って、僕が歌える数少ないレパートリーがキャンディーズ、というくらいですから。
さらに、単なるファンでとどまらないところがポイントです。
というのも、キャンディーズの解散コンサートというのが、僕が音楽の道へと進むことに、 少なからず影響を与えたからなんです。
「はて、それどんな?」と思われる方も多いでしょうね。
僕は高校3年生、大学受験を一年後に控え、しかし成績はさっぱりで、毎日悶々とした気分の中で、将来の定まらない不安をかかえながら、高校生活の最終年を迎えていました。
それまでやっていたバンドも解散し、大好きなベースの練習も、親の目を気にしながら、日々ほんのちょっとというような状況でした。
ちょうどその時、キャンディーズのファイナルコンサートが東京後楽園で行われ、そのサポートのバンドが、当時一世を風靡していたスペクトラムというユニットを母体とした、当時の売れっ子スタジオミュージシャンの方々だったわけです。
そういうわけで、この「キャンディーズ大好き!」「ベースをもっと自由に弾きたい!」「将来音楽の道も目指してみたい!」「こんなスタジオミュージシャンになりたい!」「キャンディーズと共演したい!(でもこれって、解散コンサートかぁ...)」というような様々な想いの中、あのファイナルのコンサートを、TV画面を通して見たわけです。
実はスペクトラムのギターを担当していた西慎嗣さんは、僕と同じ歳。
その彼があの画面の中でキャンディーズと共演している!
それを見つめる俺はというと、この先の進路も定まっていない。しかもベースを弾くことすら制限されている。この違いは何なんだ! くそーっ!
でも結局はそのままのダメダメな高校3年生の生活を終え、あえなく浪人へ。
さすがにこのままではいけないと、一念発起して、浪人中、「実は俺ってこれほど勉強が出来たのか!」って驚くくらい、勉強をしました。
まあそれも、今ではほとんど役に立っていない、いわゆる受験のための勉強ですが。
とにかくこの浪人の一年で絶対大学を決めて、その後は死ぬほどベースを弾いてやる!
そう堅く心に誓った記憶があります。
その後の努力が叶ってか、さすがにキャンディーズとの共演はありませんでしたが、その西さんや、スペクトラムのベースの渡辺直樹さんとは、その後、セッションでご一緒することが出来、感慨深いものがありました。
今から思い返せば、あの高校3年生の時のもがき苦しんだ悩みが、僕を音楽の道に進めさせたきっかけになったのかもしれません。そしてそれに続く浪人という一年がなければ、実は音楽を真剣に志していなかったのかもしれません。
人生、万事塞翁が馬といいますが、本当にそう思います。
僕とキャンディーズの、ちょっと変わった結びつき、理解して頂けましたか?
とにかくスーちゃん、本当に長い闘病生活、お疲れ様でした。
そして僕の人生にも少なからぬ、良い影響を与えてくれてありがとう。
安らかに眠ってください。
合掌。