今日はジャズの魅力について書いてみます。

まずベーシストの立場から言わせてもらうと、これほど好き勝手にベースを弾いても許される音楽は、他にはないということが言えます。
他のジャンルだと、例えば「C Major7」というコードがあればまず絶対、ルート音である「C」を弾かなければ、周りからかなり厳しい目で睨まれます。
ところが例えば4ビートのウォーキングラインとなると、「C Major7」のある小節の最初の音に「C」ばかりを選んで弾いていると、そのうち「お前、もうちょっとヒップな音、選択できないの?」ってなります。ひとつのコードにしてこれですから、次々出てくるコード群、その上で自由自在に(あるときはコード進行なんて完全に無視したかのように)繰り広げられるアドリブソロのサポートに至っては、こちらもコードのルート音なんかに縛られて演奏している場合じゃないってことになります。
この自由さが、ベーシストとしての僕にとっての、ジャズの最大の魅力です。
そしてこの自由さは、ベースだけに限らず、どの楽器にも言えることだと思いますし、ひいてはアンサンブル全体に関しても言えることです。
ただその自由を謳歌するためには、プレーヤーはその責任を負うことの出来る能力を持っていないといけないといえます。でもこれってまるで人生ですよね。

次に楽器編成。
僕は生徒とのレッスンでよくデュオでジャズのセッションをします。
これって、どういうことか分かりますよね?
すなわちベース二人で音楽が成り立っているわけです!
こんな音楽って他にありますか? しかも素材は、本棚にあるスタンダードブックの、どこでも好きなページをぺらっと拡げてそこに載ってる曲ならどれだっていい。
(まあ、たまたま開いたページが、ブレッカーブラザーズの「Some Skunk Funk」だったら、「これはさすがにパスやなぁ」って、別のページを開きますが)
こんな事が成立すること、これがもうひとつのジャズの魅力。
もちろんこれ以外でも、ベースとサックス、ベースとボーカル、ピアノとドラム等、編成なんてなんだって良いんです!
曲も、枯葉、ステラ、スペインなどなど、何だっていい。いやドラムスさえいれば、あとはそれにベース二人を足して「Some Skunk Funk」だっていけます!

そういう意味では、ジャズミュージシャンの共通語として「スタンダード」というものがあることもとても重要です。
ここまで素材にこだわらず、言葉の通じないどこの国のどんな人とも、ただジャズのスタンダードさえ知っていれば、どんな曲ででもセッションが出来る音楽って、他に絶対無いと思います。
例えばロックやクラシックの人が10人くらい集まって、譜面も何も無しに「さあセッションしよう!」っていって、2時間も3時間も楽しめることってまず無理だと思うのです。

そして最後にジャズの即興性。
ジャズは即興が命です。
それはすなわち人生そのものだと思っています。
僕がたまにサポートさせてもらっている加藤登紀子さんが、あるステージで、「人生って、一歩先は闇。でもそのどうなるか分からないところが面白いのよ!」っておっしゃったときに、ぼくは「ああ、それはジャズと一緒だ!」っておもいました。 
ジャズも一歩先には、素晴らしいハプニングがあるときもあれば、それをはずしておおこけするときもある。
でも質の高い連中と一緒に演奏すれば、そのおおこけを、さらに次の瞬間には素晴らしいハプニングへと持って行くことが出来ます。
そんな時にステージ上で目と目を合わせて、「イエィ!」って気持ちを伝え合うことができた瞬間は、これはもう最高です! 
人生にもこんな瞬間があるんだろうと思います。もちろん僕の人生もそして音楽も、おおこけの山盛りでしたが。

確かにポップスやクラシックの、究極の構築美を求めた予定調和な音楽も、それはそれで素晴らしいとおもいます。
でも僕はこの一寸先の闇、そして予期せぬハプニングが大好きです。
そのために、楽器の技術を必死でトレーニングして、究極の判断力・適応力・対応力を磨き、また感性を研ぎ澄ましているわけです。
もちろん落ち込むこともめげることも、穴があったら入りたくなるほどうまくいかないときも覚悟しなければいけませんが。

ジャズの魅力って、やっぱりこの「一歩先に闇がある」ところじゃないでしょうか?
そんなふうに思います。如何でしょうか?

CODA /納浩一 - NEW ALBUM -
納浩一 CODA コーダ

オサム・ワールド、ここに完結!
日本のトップミュージシャンたちが一同に集結した珠玉のアルバム CODA、完成しました。
今回プロデュース及び全曲の作曲・編曲・作詞を納浩一が担当
1998年のソロ作品「三色の虹」を更に純化、進化させた、オサム・ワールドを是非堪能ください!