Lover Man by Marcus Miller ベース譜
Lover Man by Marcus Miller ベース譜
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ファイル名 | Lover Man (Marcus Miller).pdf |
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バージョン | 1 |
制作 | 納浩一オンラインショップ |
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Lover Man (Album’Double Trio’MaCoy Tyner)/ Played by Marcus Miller
ソロを取るということに関して、これまでに様々な考察をしてきましたが、ここまでに「バラードのソロ」については全く触れてきませんでした。もちろん、コード進行を分析し、それぞれのコードに対して使えるスケールを割り出し、それに対してフレーズを当てはめていくということや、そこでモチーフデベロップメントやガイドライン、リズミックなアイデアなどの様々な方法を駆使して対応していくということに関しても、テンポの違いには関係なく、どんなソロでも同じです。しかし、これはジャズに特有のことですが、曲によってはあり得ないような速いテンポで演奏したり、また本当に遅いテンポで演奏したりします。どちらの場合も本当に難しいのですが、僕の経験から言えば、速いテンポの場合はとにかくリズムさえしっかりキープできれば(それが大変なのですが)、なんとかごまかしが効きます。しかし遅いテンポの場合、そのソロの内容やリズム感の善し悪しが、より明確にソロに出てしまいます。僕は、バラードのソロが上手い人は本当にソロが上手い人と思っています。そして僕自身が初心者だった頃、バラードのソロには本当に苦労した記憶があります。リズムは突っ込むし、ソロに歌心はないし、と。そんなときに実に参考になったのが、このマーカスのソロです。憎いほどの歌心を感じさせるフレーズや、そうかと思えば高速パッセージによるフレーズ、オルタードテンションの巧みな使い方や分散フレーズ、広域にわたるフレーズの設定等々、こちらのソロも、チェックしどころが満載と言えるソロです。ではその当たりを解説していきましょう。
まず特筆すべきは、彼のフレットレスベースによるニュアンスの付け方です。これはこのソロ全体について言えますが、どのフレーズも、いやどの音も、一音一音しっかりとニュアンスがついているといっても過言ではありません。これも僕が思っていることなのですが、ソロは、その音の選択よりも、音色とニュアンスの方が大事だということです。すなわち、どんなにいい音を選択していても、そこにいい音色といいニュアンスが無ければ、そのソロは本当に上手には聞こえません。ところが、音色とニュアンスが良い人のソロは、多少つまらない音を選んだとしても、十分かっこよく聞こえます。多くのブルース系のギタリストなどがそのいい例かと思います。ということでまずはこのソロで、マーカスがフレーズごとに付けている様々なニュアンスをしっかりチェックしてみてください。またそういう細かなニュアンスは、譜面には書ききれないということもありますので。
さて、そのソロの入り口ですが、もうこの導入部分だけでも引きつけられますよね。単に、Aの音からキーのダイアトニックの音で上行しているだけなのですが。Aセクションの3小節目では、メジャー7thの音飛びによるフレーズとなっています。音飛びのアイデアをフレーズで使っている良い例ですね。4小節目の3,4拍目では、オルタードスケールのフレーズとなっています。マーカスは、ドミナント7thコードの時によくこのフレーズを使いますが、ジャコも同じようなフレージングをします。6、7小節目は、F7のブルーノートを使ったフレーズとなっています。なんともブルージーでかっこいいですね。7小節目では再び、7度飛びのアイデアを使っています。8小節目からBセクションの1小節目には、このソロの前半での、最もアクティブな高速パッセージが出てきます。ちょっと分解して分析してみます。というのも、実際は本当にこのように弾いているのかどうか正確に聞き取れている自信が無いのですが、ならば「きっとこういう理論展開でのフレーズだろう」ということで、理論の方から、音の選択を解析してみることにしたからです。まずAセクションの8小節目の3,4拍目は、A7のCom.Dim.スケールによるフレーズです。続くDm7では、1拍目でDmの分散(F、G、A、C)とその平行移動のEmの分散(G、A、B、D)で、Dのドリアンのフレーズとなっています。2拍目はBの音から、ほぼスケール的に下降。3拍目は逆にGのミクソリディアンスケールで上行し、C#という、#11thの音を一度入れながら、今度はクロマティックにFの音まで下降しています。バラバラにして考察すると、どれもそんなに驚くようなアイデアではありませんが、このような正確なリズムで、かつ連続して弾かれると、はやり「おお〜!」と思ってしまいますよね。この高速パッセージの直後のBセクションの3小節目では、一転して、ニュアンスをしっかり効かせたメロディアスなフレーズ。なんとも心憎い展開です。
それに続く4小節目の3拍目からは再び高速パッセージ。ここでもC7もCom.Dim.を使っています。続くB♭7では先ほどと同じく、Fmのブルーノートとしてのフレージングです。サビにあたるCセクションでは、この曲は一旦Gメジャーに転調し、続いてDmの平行調であるFメジャーに転調していますが、どちらの場所でもそのソロのポイントは、クロマティックな音使いと、たっぷりのニュンスがついたブルーノートの使い方を挙げておきたいと思います。Dセクションの3〜5小節目辺りは、本当にこういう譜割りで弾いているのか、こちらも自信がありません。でもその意味で言うと、マーカスは、きっちりと譜割りに出来るようなリズムを越えて弾いていると言えます。言い換えれば、拍を大きく取って、その中に自由自在に音符を入れ、そして次の着地点でしっかりリズムに戻ってくることが出来るということですね。このようなタイム感が、バラードの演奏では必要だと言えます。マーカスは、ファンクを弾かせても強力なリズム感ですが、それはこのバラードの演奏でも同じなんだということを痛感させれられます。このソロ、いかがでしょうか?